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―――本の魔物であるモジカは、
自分の物語に引きずり込む演者を探している。
人間でも、言葉を話す動物でも、それ以外でも。
2023年、夏の東京。
あなたたちはその日、夜の新宿を彷徨っていた。
長引いた仕事でくたくたに疲れて、帰路についていたのかもしれない。
誰かに追われて、誰かを探して、繁華街の喧騒をかき分けていたのかもしれない。
あるいは何か耐え難い現実を忘れるために、アルコールで体を満たしていた頃かもしれない。
兎にも角にも、各々の目的のために人混みの一部となって進んでいたあなたたちの体は、
次の一歩を踏み出したとき、まったく見覚えのない場所へたどり着いていた。
入り組んだコンクリートの建物の一角。ぼんやりと赤みがかった視界。
出口や案内は見当たらず、あなたたち以外に人の気配も感じられない。
仕方なく階段を進んでいったその先に、あなたたちは不思議な看板を見つけた。
「bar Silverfish」……果たして、新宿にそんな店はあっただろうか。
勇気を振り絞り開いたドアの先にあったのは……至って普通のバーカウンター。
そして……………………
「やあ、いらっしゃい。……え、迷子?」
「これも何かの縁だし、1杯飲んでいってよ。」
「君からはどんな物語が聞けるのかな。」
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